湯沢市ジオパーク推進協議会は、秋田県湯沢市の「世界ジオパーク」認定登録に向けて、日々奮戦中です。
ゆざわジオパークのいろいろな情報や事務局の日々の感想をつづるブログです。

菅江真澄と歩く⑭ 「美の滴る郷」

2013-05-03

 みなさま、こんにちは。
 湯沢市ジオパーク推進協議会事務局のミレーです。

 この企画も残すところあと2回です。
 今回は若かりし日の菅江真澄(31歳)が、当時の小野で体験した「小野小町ジオツアー」のなかで書き記した文章から、小町本人がどのような人となりであったかを考えてみます。
 後に書かれる「雪の出羽路」が地誌の体裁になるのに対し、若き日の「小野のふるさと」はまさしく紀行文の体裁で、小野小町という伝説に対して菅江真澄が何を感じたのか、みずみずしく思いがつづられています。
 いっしょに伝説を巡りましょう。今回はかなり文章量多めですが、どうかお付き合いください。

 キーワードは、「雨乞い小町」です。
  

  里の子の云、小町姫は九のとし都にのほり給ひて、又としころになりて此国に来給ひて、
  里の子がいうには、小町姫は九歳で都にのぼり、またある年齢になってこの国(小野)に戻ってきて、

  植おき給ひし芍薬とて、田の中の小高きところにあり。いさたまへ、見せ申さんとて、あないせり。
  植えていった芍薬が田の中の小高いところにある。さぁ見せましょうといって案内をしてくれた。

  其めくり、しば垣ゆひめくらしたる中に、やかてさくへう、ゑひす薬の花茂りあひたり。
  その周りを柴垣で囲んだ中に、やがて咲きそうなえびす薬(芍薬)の花が茂っていた。

  これを、いにし頃より九十九本ありて、花の色はうす紅にして、花いささか、こと花とたかふなと、
  これを、いにしえの頃から九十九本あって、花の色は薄紅で、小さく、他の花とは異なるなどいい、

  此盛を待て田植そめてけり。
  花盛りになるのを待って田植えを始めるという。

  枝葉露はかり折てもたちまち空かきくもりて、やかて雨ふり侍る。
  枝や葉をほんのすこし折っただけでも、たちまち空が掻き曇って雨が降り出す。

  まことにや雨乞小町ならんとかたる。
  まさに「雨乞い小町」ですねえ……と語った。


 「百本」ではなく、「九十九本」というあたりが、物悲しく、切ないですね。
 「雨乞い」で降る雨というのは、いわゆる「神頼み」の結果の「恩寵」だと思うのですが、この「雨乞い小町」における「雨」とは、きっと小町の……

 さて、もうひとつ、「雨乞い小町」に関する記述を見ていきましょう。


  又あるしのかたりけるは、一とせ日てりつつき、田はたけ、みなかれ行まま此芍薬の辺りにいもゐして、
  ある家の主人が云うには……ある年日照りが続いて田畑が枯れていくので、この芍薬のあたりで願掛けをして、

  ことはりや日のもとなれは、とうたひしかは、雨たちまち降て其しるしをあらはし給ふ。
  『たしかにここは“日ノ本”ですが』と謡うと、たちまち雨が降り出して霊験を現した。

  小町姫にもの奉り、此もくひに人々の妻、むすめの、みめよきを集めて歌うたひ酒のみて、
  小町姫に捧げものをして、御礼に人々の妻や娘の綺麗どころを集めて歌を歌い、酒を飲んで、

  さはにはやしはやしすれは、ときのまに、よき空くもりて、やをら雨ふり出れは、
  大いに騒いだところ、たちまちに晴れた空が曇り、やがて雨が降り出したので、

  いそきみな家に帰れは、雨はいやふりにふりて、はたつものもみな波にゆられて、晴行空もみえす。
  急いで家に帰ったが、雨は降りに降り続け、畑のものもみな水びたしになり、晴れる様子はまるでない。

  せんすへもなう、又こと神にいのりして、ややはれ行てけるは、うたての小町姫やといふ。
  どうしようもないので、また別の神に祈って、なんとか晴れていったので、小町姫にも困ったものだ。
  ……などと言う。


  
 小町の人となりを考えるうえで、なかなか重要な示唆を与えていると思うのですが、いかがでしょうか。
 もうちょっとだけ続きます。


  ちかき世に、はいかいの蓮歌師、芍薬の枯葉折て家つとにせんと、たたう紙のあはひにいりてけれは、
  近い時代、旅の蓮歌師が、芍薬の枯葉を折っておみやげにしようと、紙の間に入れたところ、

  あめたちまち降て身いたくぬれぬれかへるとて、
  雨がたちまち降りだしてびしょ濡れになってしまい、

  又れいの あふむかへしや むらしくれ
  この村時雨は例の鸚鵡返しか。かんべんしてくれ!


 伝説となる前、小町は人間でした。

 「小野のふるさと」の最後の終盤で、菅江真澄はゆざわの地であるものを見ます。
 以前の記事でも紹介した箇所ですが、今回は現代語訳込でどうぞ。


  はなたのやうなる布を、あつあつとさして着たる、いときよらなる女、老人にいさなはれて行は小野の人なり。
  縹色(薄青)のような布を厚く着た、輝くように美しい女が、老人に連れられていくのは小野の人である。

  あな、めてたの女と、人うちまもりたり。小町ひめのゆかり残りて、いにしへよりいまに至りて、
  「あぁ、なんという美人だろう」と、人々が見つめていた。小町姫のゆかりが残り、昔から今にいたるまで

  小野の邑にはよき女いて来るとは聞と、かかるかおほよき女は、世中にあらしなと酔なきしたり。
  小野の郷にはよい女が生まれてくるとは聞くが、これほど美しい女は、世の中にあるまいなどと、
  みな酔いしれ、夢心地のようだった。



 この時の菅江真澄の感動は、30年あまりの時を経て、地誌「雪の出羽路」においてある結論に至ります。
 「小野小町出生の地」とは。
 その答えは、続く最後の回で確かめるとしましょう。


 本日のブログはミレーがお送りしました。



「菅江真澄と歩く」シリーズ バックナンバー

①ジオサイト「院内銀山」より  「追憶の院内銀山」
②ジオサイト「山田」より     「突撃! 山田・松岡七不思議!」
③ジオサイト「稲川」より     「遥かなる稲庭うどん」
④ジオサイト「三関・須川」より  「三関・須川の石と河」
⑤ジオサイト「高松」より     「高松に燃える紅葉」
⑥ジオサイト「高松」より     「白く轟く川原毛地獄」
⑦ジオサイト「小安」より     「小安峡大噴湯、岩を割って息吹く」
⑧ジオサイト「小安」より     「今も昔も節理は摂理」
⑨ジオサイト「岩崎」より     「ごきげんよう、能恵姫様」
⑩ジオばなし「怪談」より     「荒寺の怪」
⑪ジオ広域圏「栗駒山」より   「栗駒ゆっくりひとめぐり」
⑫ジオ秘湯「栩湯」より      「幻の湯から未踏を望む」
⑬ヘリテージ「小野小町」より  「きよらなる伝説」
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湯沢市ジオパーク推進協議会事務局

Author:湯沢市ジオパーク推進協議会事務局
世界ジオパーク認定登録を目指して日々活動している「湯沢市ジオパーク推進協議会」事務局です。

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