湯沢市ジオパーク推進協議会は、秋田県湯沢市の「世界ジオパーク」認定登録に向けて、日々奮戦中です。
ゆざわジオパークのいろいろな情報や事務局の日々の感想をつづるブログです。

ジオパークという神話

2013-12-11

 みなさま、こんにちは。
 湯沢市ジオパーク推進協議会事務局のミレーです。


 霧島を経て未だに神話的感覚が残留しているので、今回は少々真面目な話をしてみたいと思います。




 
 みなさんは「テューポーン」あるいは「テュポーン」もしくは「テュポン」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
 テューポーンはギリシャ神話に登場する、とんでもなくとてつもない魔物です。
 どれくらいとんでもないかと言いますと、「背の高さは星々に届き、両腕を伸ばせば世界の端から端に届き、脚は毒蛇がとぐろを巻き、無尽蔵の力を持ち、挙句の果てに不死身」とまぁこんな具合の魔物なわけです。


「ギリシャ神話なんてゆざわジオパークに何の関係もないだろ! いい加減にしろ!」
 と思われるかもしれませんが、どうかご容赦ください。


 さて、テューポーンは、ギリシャの神々に戦いを挑みました。
 「果てしない爆炎、炎弾、噴流」によって世界は大炎上、馬鹿でかいテューポーンが嵐のごとく大暴れする様にギリシャの神々は恐れ慄き、我先にと逃げ出す始末。
 そんな中、神々の王であるゼウスがテューポーンに立ち向かいます。ゼウスは金剛の鎌と雷霆(稲妻)を武器とし、テューポーンと全宇宙を激震させる死闘を繰り広げます。テューポーンの炎が全世界を炎上させ、ゼウスの雷霆が全宇宙を焼き尽くしました。
 両者一進一退の攻防の後、ついにゼウスはテューポーンを追い詰めます。しかし、テューポーンは不死身。ゼウスですらテューポーンを葬ることはできず、ある山の下敷きにすることで、この恐るべき魔物を封印するしかありませんでした。

 テューポーンは今も生きており、彼が苦悶に身を捩るたび、その山は火を噴くのだそうです。

 その山の名は、エトナ山といいます。




 神話の機能の一つに、「現に在るものの起源を説明する」というものがあります。
 以下、私論です。
 
 古代の人々の目に、しょっちゅう噴火を繰り返すエトナ山は一体どのようなものとして映っていたのでしょうか。「どうしてこの山はこんなにも火を噴くんだ」と思ったのではないでしょうか。
 当然、当時の人々はマグマがどうした、マグマだまりがこうした、噴火のメカニズムが云々、そんなことは知りません。それでも彼らは、目の前の脅威を理解しようとした。

 そして、神話が生まれた。

 「エトナ山が噴火するのは、山の下に不死身の魔物が封印されているから」

 この物語を、「非科学的」と断じますか?
 この物語に、「科学的根拠」を求めますか?





 かつての世界、国、あるいは共同体には神話があり、物語があり、ひとりひとりが意識する必要もなく、世界のありとあらゆる事物は世界観という枠組みに包括され、強固に結びついていた。
 ところが近代自然科学が登場して以来、世界の諸相は徹底的に個別化され、分断されてきた。
 太陽が昇り、また沈む様は、太陽神の死と再生の物語を失い、物理法則に支配された天体の運行に過ぎなくなった。
 日本列島の形成は、夫婦神と天沼鉾による開闢ではなく、プレートテクトニクスにおけるひとつの結果となった。


 ……私は別に近代自然科学を否定しているわけではありません。こうしてカタカタとキーボードを叩いてブログを書けるのは、科学的産物の恩恵に与っているからですし、今更科学文明を捨てようともまったく思いません。
 しかし、「物語」、あるいは「ストーリー」という点では……どうなんでしょうね。
 人類が歴史の曙から脈々と受け継いできた諸々の物語を「科学的根拠」の名のもとに片っ端から粉砕してきた「近代自然科学」を、あくまで基底に置く「ジオパークのストーリー」とは、一体どのようなものであるべきなのでしょう。

 考えようによっては、ジオパークは人間が世界との間に“かつて持っていたが、失ってしまった”物語を復活させようとしているのではないでしょうか。
 この場合の物語とは、「つながり」と言い換えることもできるでしょう。
 ジオパークの根底には「正確な科学的知識に基づく、大地に対する正確な理解」がありますが、それと同時に、「科学一辺倒で物事を推し量ることに対する反省あるいは警鐘」も含まれているように思います。それゆえに、ジオパークにおいては人文的な価値も重要視され、さらに「ストーリー」という単語が乱れ飛んでいるのだと。

 幸いなのは、かつて間違いなく存在した物語の残滓が未だに存在していることと、我々が遠い記憶に胸を熱くするだけの感性を保っていることです。
 千々に千切れた物語の断片を、ひとつひとつ丁寧に拾い上げていくことは、困難ではありますが、不可能ではありません。


 ジオパークとは、近代自然科学の洗礼と物語の喪失を経た世界において、今日的な意味を備えた新たな神話を構築しようとする試み……なのかもしれません。



 本日のブログはミレーがお送りしました。
プロフィール

湯沢市ジオパーク推進協議会事務局

Author:湯沢市ジオパーク推進協議会事務局
世界ジオパーク認定登録を目指して日々活動している「湯沢市ジオパーク推進協議会」事務局です。

御訪問ありがとうございます
カレンダー
11 | 2013/12 | 01
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
湯沢市のお天気時計
最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
リンク
検索フォーム
Yahoo!ニュース
RSSリンクの表示
QRコード
QR
都道府県別アクセス数
過去1週間の状況です

ジオターゲティング