湯沢市ジオパーク推進協議会は、秋田県湯沢市の「世界ジオパーク」認定登録に向けて、日々奮戦中です。
ゆざわジオパークのいろいろな情報や事務局の日々の感想をつづるブログです。

美じん歴訪⑥ 深き草葉を越えて

2014-03-11

 みなさま、こんにちは。
 湯沢市ジオパーク推進協議会事務局のミレーです。


 今回の記事は絵も写真もなく、ひたすら文章だけで猛烈に長くなっています。ご了承ください。



 前回は深草少将の百夜通いのエピソードから、後世において小野小町がどのような人物像で描かれ、その中で雄勝町がどのように小野小町を扱ったのかについて見てみました。

 ところで、小野小町の一連の物語の中で重要な位置を占めるこの「深草少将」、非常に今更な話ですが、実在の人物とは考えられていません。


 えっ!?


 深草少将は室町時代、『能』の演目として『百夜通い』が創作された時、その登場人物として一緒に誕生したと言われています。
 つまり、「深草少将」という人物は、「創作された」人物なのです。

 なんてこった! ということは、雄勝町における小町伝承はすべてまやかしだったのか!

 ……とはなりませんのでご安心ください。

 火のない所に煙は立たず、これがミレーの論であります。

 私が思う所では、深草少将は『器』でした。
 深草少将なる人物が創作される以前から、小野小町と関わりがあったと知られていた男たちの諸相を包括するべく作り出され、さらに作り出されてからも、小野小町に関わる男たちのエピソードのことごとくを、深草少将の名のもとに飲み込むようになった……『器』。
 すなわち、「小野小町を追って都からやってきた名も知られぬ男性」が実在しており、彼が「深草少将」の器を得て後世に名を残した……という可能性もないとは言い切れません。


 それでは、深草少将なる人物が誕生する以前から存在が知られ、特に室町時代の能作者が大いに取材したであろう、小野小町と関わりのあった男たちを列挙してみましょう。


○在原業平(ありわらのなりひら)
小野小町と同じ六歌仙のひとり。
『古今和歌集』の『恋歌』の巻において、小野小町との贈答歌のような順序で歌が載っています。また、『伊勢物語』の主人公(=昔男)とされ、そのなかでは実際に恋愛関係にある“色好みの女”との贈答歌として、先述の歌が採用されています。すなわち、色好みの女=小野小町となります。
このことから、後世小野小町と恋愛関係にあったとされました。
『髑髏小町』においても、失意のうちに斃れ、野辺で髑髏を晒していた小野小町を助け上げるのは業平の役目です。


○文屋康秀(ふんやのやすひで)
小野小町と同じ六歌仙のひとり。
小野小町に対する想いはなみなみならぬものがあったようで、自分が三河の国(愛知県東部)に赴任することになった際、小野小町に一緒に行かないかと誘っています。これはある種のプロポーズだったと思うんですがどんなもんでしょう。
それに対する小野小町の返事は、字面だけを見れば「Yes!」なのですが、当時の恋愛事情はそれほど簡単なものではなかったようです。


○遍照(へんじょう)
小野小町と同じ六歌仙のひとり。
出家前は良岑宗貞(よしみねのむねさだ)といいました。
俗時代に小野小町とどのような交流があったのかは定かではありませんが、『後撰集』において、出家した遍照を小野小町が訪ねてきた際に交わされた素敵なやりとりが記されています。


○小野貞樹(おののさだき)
六歌仙でもなく、あまり目立つ人物ではありませんが、『古今和歌集』からは、小野小町との強い関係性が見て取れます。
というのも、遍照はさておき、小野小町は贈答歌において基本的に“相手から歌を贈られてそれに応える”というスタイルなのですが、小野貞樹に対しては、“自分から歌を贈っている”のです。そして小野貞樹の返歌からも、小野小町に対する強い想いが感じられます。
小野貞樹の生きた年代を考えると、小野小町もそろそろ若いとはいえない年齢になっていたと思われ、色々な想像を掻き立てられます。


○安部清行(あべのきよゆき)
『古今和歌集』において、小野小町との贈答歌が記されています。
とはいうものの、ぴしゃりとはねつけられた感のある、安部清行にとってはなんとも厳しいやり取りです。
小野小町に恋い焦がれつつ、思いを遂げられなかった男たちの象徴……というのは言い過ぎでしょうか。



 さて、以上の五人は「歌」が残っていますので、実在が(ほぼ)確実視されています。伝説や創作の類ではありません。
 彼らの存在、そして歌のやり取りは小野小町という女性の人となりを想像させるとともに、やがて「深草少将」なる、「小野小町に恋い焦がれる男」へと結実していきます。

 しかし、まだ「深草少将」には成り得ません。
 なぜなら、「百夜通い」のエピソードになくてはならない「小野小町自身の想い」、そして「悲恋」の要素が欠けているからです。
(世に伝わる百夜通いのエピソードの中には、悲恋もへったくれもなくひたすら小野小町を高慢な女性と描き、挙句の果てに一計を案じて深草少将を殺してしまうようなものまで存在しますが、ゆざわの住民としてそういったお話はとりあえず無視しています)

 また、「深草少将」といいますが、「深草」とは一体何なのでしょう?


 ……ところで、小野小町の「町」とは、天皇の後宮に仕える女性に付けられる名です。
 そして、歴史書『続日本後紀』の842年の記事には、「小野吉子」なる女性が、仁明天皇の更衣として登場しています。

 小野小町の正体が小野吉子であったのかどうかは、ここでは問題にしません。

 しかし、伝承における小野小町の活躍した年代を考えると、この仁明天皇の治世(833~850)とずばり重なることも確かです。
 更衣とは天皇の妻のような立ち位置ですが、なにぶん“たくさん”妻がいるので、誰かひとりにべったり、というわけにはいかないでしょう。
 せっかく更衣になれても、想い人である天皇はなかなか訪れてくれないかもしれません。


  思ひつつ 寝ればや人の 見えつらむ 夢と知りせば 覚めざらましを


 小野小町が詠んだ数々の恋歌は、もしかしたら……


 最後に。
 深草少将は「小野小町を想う男たち」の象徴として形作られましたが、そこに「小野小町の想い」と「深草」という名を刻み付け、最終的に「深草少将」という人物を完成させたであろう、ひとつの事実を紹介します。



 仁明天皇の墓の名は、【深草陵】(ふかくさのみささぎ)……




 本日のブログはミレーがお送りしました。


「美じん歴訪」 バックナンバー

① 世界三大……もしくは四大美人
② 男たちの物語
③ いとせめて 恋しき時は……
④ うたた寝に 恋しき人を……
⑤ 幾百の夜を通う
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Author:湯沢市ジオパーク推進協議会事務局
世界ジオパーク認定登録を目指して日々活動している「湯沢市ジオパーク推進協議会」事務局です。

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